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GOTH
森野が拾ってきたのは、連続殺人鬼の日記だった。 学校の図書館で僕らは、次の土曜日の午後、 まだ発見されていない被害者の死体を見物に行くことを決めた……。 触れれば切れるようなセンシティヴ・ミステリー。
つかみどころのない、どこか異常な登場人物(特に主人公)が巻き起こす、 どんでん返しの連続したストーリー。これがこの作品の肝だと思います。 二十代でこんなものが書けてしまう作者は、本当に、すごい。 お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか? 野夜。 無口。 女子高生。 ヒロイン。 美少女。 萌。 以上。 この作品の欠点、残念なところはどこですか? 話の展開がグロいので、そういうのが苦手な人にはオススメできないかな……。
主人公『僕』の淡々とした一人称文、乙一得意の残酷描写。 しかし特筆すべきはやはり、読者の予想を大きく裏切るそのトリックです。 ここからは多少ネタバレになります。 とにかくトリックの嵐です。叙述トリックというやつでしょうか。 とにかく、思い込ませて思い込ませて、最後に予想を裏切るお約束のどんでん返し、 というパターンですが、しかしそのトリックの質が非常に高い。 最大のネタバレをすれば、これは映像のない小説でしか出来ないトリック、と言えるでしょう。 なかなかにグロテスクかつ残酷すぎる描写が多いので、それなりに人を選ぶ作品ですが、 好きな人にはたまらないであろう設定です。見ておいて損はないと思います。 お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか? 主人公の『僕』も捨てがたいですが、あえて選ぶならヒロインの森野夜。 主人公と同じ『GOTH』でありながら、しかし主人公とはまったく違うタイプの少女。 取り付く島もないように冷めていながらも、実はところどころで抜けている天然な彼女には、 何だか言い表しがたい『萌え』が伺えます。 とにかく登場人物は変態です。設定も変態です。 こんな人間たちを描く作者は、誰よりも変態なんだと思います。 この作品の欠点、残念なところはどこですか? この作品は登場人物の変わらない短編集なのですが、 とにかく全ての物語にその叙述トリックが使われているので、 二話三話あたりから展開が予測できてしまうところですね(それでも騙されます)。 それを除けば、他に目立つ欠点はないと思います。
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サイコロジカル
死線の蒼(玖渚友)、――絶体絶命! 「きみは玖渚友(くさなぎとも)のことが本当は嫌いなんじゃないのかな?」 天才工学師・玖渚友のかつての「仲間(チーム)」、 兎吊木垓輔(うつりぎがいすけ)が囚われる謎めいた研究所―― 堕落三昧(マッドデモン)斜道卿壱郎研究施設。 友に引き連れられ、兎吊木を救出に向かう「ぼく」こと “戯言遣い・いーちゃん”の眼前に広げられる戦慄の“情景”。 しかしその「終わり」は、さらなる「始まり」の前触れに過ぎなかった――! 絶好調、西尾維新の<戯言シリーズ>。こんな新青春エンタを待っていた!!
処女作『クビキリサイクル』は真っ直ぐな(?)ミステリでしたが、 最終刊『ネコソギラジカル』では少年ジャンプみたいなお話に……… でもこの作品には驚かされてしまいました。 本書は第二の真相とも言える『どんでん返し』がある作品なんですが、 百八十度ひっくり返してくれました。そりゃあもう気持ちの良いくらい。 あの伏線の大胆な張り方には驚くだけです。 以上の理由故に、この作品は『戯言シリーズ』の中で一番のおすすめです。
私は彼を古典トリックの神様と呼びます(笑)。
(サイクルに登場した五人とか、『仲間』の九人とか、十三階段とか)、 九割以上『天才』を描けていない点です。 たぶんですけど、氏が真の天才キャラを描けたのは『兎吊木垓輔』だけだと思います。 『天才』を書くのは簡単だけど、『天才』を描くのは難しい。 改めて感じさせてくれた『戯言シリーズ』でした。
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2006年度ライトノベルBESTランキング第3位(書籍・このライトノベルがすごい!) 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
大人になんてなりたくなかった。 傲慢で、自分勝手な理屈を振りかざして、くだらない言い訳を繰り返す。 そして、見え透いた安い論理で子供を丸め込もうとする。 でも、早く大人になりたかった。 自分はあまりにも弱く、みじめで戦う手段を持たなかった。 このままでは、この小さな町で息が詰まって死んでしまうと分かっていた。 実弾が、欲しかった。 どこにも、行く場所がなく、そしてどこかへ逃げたいと思っていた。 そんな13歳の二人の少女が出会った。 山田なぎさ――片田舎に暮らし、早く卒業し、社会に出たいと思っているリアリスト。 海野藻屑――自分のことを人魚だと言い張る少し不思議な転校生の女の子。 二人は言葉を交わして、ともに同じ空気を吸い、思いをはせる。 全ては生きるために、生き残っていくために――。 これは、そんな二人の小さな小さな物語。渾身の青春暗黒ミステリー。
むしろこの子はこんなことがあるからこうなんだ。と、頷けます。 一人一人のキャラクターにはそれぞれどうしようもなく困っている所があり、 それが作品にリアリティーを生み出しています。 ここから先は一部ネタバレが入りますが、 海野藻屑(うみのもずく)という親に虐待されている女のコがいます。 そのコは自分のことを「ぼく」と言ったりしているいわば変人なんですが、 何故か感情移入が出来て不思議でした。 この本読んで色々面白い知識を得たのでなんか得した気分です(笑)。
(イラストがそう思わせているのかも知れない……)
強いて言うなら物語にあってもなくてもいいような「無駄」があったことでしょうか。
ページ数の短さに反比例して内容が濃い。 ・キャラクターがどれも異質で、非凡なのにアッサリ感情移入ができるところ。 情景描写も研ぎ澄まされていて、隙がなく洗練された印象を受けました。
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あれ!? その小説、もしかして105円で売られていない? |
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