人間の性格というのは、ピンチに追い込まれた時、究極の選択を突きつけられた時にこそ、前に出ます。
普段の言動というのは表面的なものであり、表層をいくらなぞったところで、目の肥えた人には、よくあるパターンの無機質な集合体としか映らないでしょう。
そのキャラクターの魂を剥き出しにするような場面、心の葛藤を描き出すようにするのです。
例えば、王国に忠誠を捧げた聖騎士、という人物がいたとします。
彼が大活躍する話を作ってみるとしましょう。
彼は、国を守るために戦争に参加した。連勝を重ね、王からお褒めの言葉をもらう。
だがその夜に、将来を誓い合った恋人の魔法使いが敵に内通していることを知ってしまった。
このとき、彼はどう行動するのか?
そこで、彼の「愛」と「忠誠」が激しく葛藤することになります。
恋人を断罪すべきか、説得して内通をやめさせるか、それとも黙って何もしないか、はては主君を裏切って、彼女と添い遂げるために敵に寝返るか……
彼の「愛」と「忠誠」が大変な試練を受けることによって、その質が問われていくことになるのです。
想像しただけでも、ああ、これからどうなるんだろう? とワクワクしてきませんか?
これこそ、キャラの性格を深く描写する最高のコツです。
心の葛藤を描き出すと、登場人物は生きた質感を持った人間になります。
2つの異なる感情が、1人の人間の内面で激突し、苛烈な火花を散らす……
こういうところから、手に汗握るドラマは生まれてくるのです。
例えば、田中ロミオのライトノベル『AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~』(2008/7/19)の主人公、佐藤一郎は、中学時代はスクールカースト最底辺に位置するオタクでしたが、高校デビューで変身し、カースト上位グループに入り込もうとします。
しかし、好きになった女の子が四六時中妄想の中に生きている病的なオタク娘でした。このため、彼女を庇って再びカースト最底辺に落ちるか、あくまで自分の保身を優先するかで葛藤します。
オタクからリア充への変身というのは、多くの人に取って共感しやすいテーマであり、この葛藤がある故に、佐藤一郎は非常に印象的なキャラクターになっています。
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