登場人物を生きた存在にするためには必殺技とも言うべきコツがあります。
それは完璧な人間にはせず、必ず欠点を持たせるようにすることです。
完全無欠天下無敵人格完成のヒーローが小説にでてきても、あまりおもしくありません。
そんな奴が勝つのは当たり前だし、読者とは隔たりがありすぎるので、まったく共感できないのです。
ヒーローでありながら、普通の人間と同様に弱みを持ち、等身大の感情で悩んだりするから、人はそれに同調し、感情移入できるのです。
同調した上で、超人的な活躍をしたときに、それは自分のことのようにうれしいのです。それに
欠点はチャームポイントにもなります。
例えば、頭脳明晰、容姿端麗の美少女が、実は料理が壊滅的にヘタクソだったりするのは、王道とも言うべきキャラクターのパターンです。
何でもできる学園のアイドルが、唯一料理が苦手なことを気にしていたりすると、それが妙にかわいらしく見えてしまって、世の男たちは『萌え~』と叫ぶのです。
または、向かうところ敵なしの熱血格闘野郎が、実はシャイな一面を持った少年で、女の子に声もかけられなかったりするとおもしろいでしょう?
自分と同じようなことで悩んでいるキャラが、巨大な困難に立ち向かってこれを粉砕していく……
このようなシュチュエーションを作ると、読者は登場人物に感情移入しやすくなります。
『スラムダンク』や『バガボンド』を描いた人気漫画家の井上雄彦さんも、NHKのインタビューの中で
「キャラクターを作るときは、完全な人間にはせずに必ず欠点を持たせるようにしています」
と、答えたことがあります。
人気漫画家も実践しているノウハウなのです。
登場人物には必ず欠点を持たせるようにしましょう!
普段は格好の良いヒーローだけど、人間らしい欠点もあるというパターンとは逆に、
普段は、ダメダメ人間だけど、本当は誰にも負けない特技や能力を秘めており、土壇場では一番の活躍をするというタイプのキャラクターもいます。
(主人公のタイプとしては、こちらの方が多い気がします)
例えば、名作漫画に『シティーハンター』というのがあります。
主人公の冴羽リョウは「シティーハンター」と呼ばれる裏の世界でNo.1の腕を持つプロのスイーパー(ボディーガード)。
しかし、美女の依頼しか受けないというポリシーを持ち、人一倍スケベでエロく、関わった女性にバカなセクハラ行為を繰り返して、パートナーの香にハンマーでどつきまわされます。
ところが、事件の大事な場面では類まれなる戦闘技術で美女のピンチを救い、彼女のトラウマまで解消してしまう、という活躍をします。
美女は毎回、最後に彼に心を許し、惹かれてしまうのですが、彼は今までのスケベな態度とは裏腹に、事件が終わると、あっさりと身を引いてしまいます。
バカでスケベな言動を取っておりながら、実は女性のことを真剣に考えての行動も同時にしているのですね。
この普段の言動と、超人的な活躍、美女への紳士な態度とのギャップが、彼の魅力となっています。
あかほりさとるのライトノベル『爆れつハンター』の主人公キャロット・グラッセもこのタイプです。
爆れつハンターは、悪しき魔法使いによって苦しめられる罪無き人々を救う、闇の仕置き人の物語です。
キャロットは、お調子者で三枚目。その上、女の子に弱いダメなスケベ男。
悪しき魔法使いを狩るソーサラーハンターの一人でありながら、一般人と変わらない身体能力しか持たず、魔法、その他の戦闘技術も身に付けていません。
一見すると、仲間の足を引っ張るだけのお荷物でしかありませんが……
実は、魔法攻撃を吸収して巨大な怪物の姿へと変身する獣人化(ゾアントロピー)能力を持っています。
魔法攻撃に対して彼は無敵であり、魔法使いにとっては最大のジョーカーとなるのです。
このため物語の終盤では、彼は毎回、最高の活躍を見せることになります。
まさに主人公の面目躍如ですね。
普段はダメだけど、大事な場面では活躍する、というギャップが快感を呼ぶのです。
発行部数は770万部を記録した『ソードアート・オンライン』(2009/04月刊行)で使われている技術に
『役割を無くした人物を設定すると話になる』というものがあります。
例えば、助けが遅れてパーティのリーダーである地位を失う、妻のほうが強くなり、夫のプライドを無くす、とか。
そうして役割をなくした人がリベンジすると物語になります。
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