シリアスの難点として黄泉竈食(よもつへぐい)が出る部分があります。怪物が準備して調理してくれた食事って、たぶん日本人なら食べられない。
ホラー系で見ていて、思わず笑ったのが黄泉竈食を思い切ってするのは「女」が多い事です。もちろん例外はあるんですけど、食わず嫌いとか見た目が嫌だから死んでも食わない、残すってタイプはワタシ的には「男」が多いんですよね。
食事面で思いましたけど、ジャコウさんに何一つ『害意がない』とナルミが思いこめるのも個人的には不思議になります。
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引き合いに出しますけれど。
だいぶ前に【マンスリー・セレブ】っていう現代版の『お菓子の家』、あるいは『注文の多い料理店』に誘い込まれた人々が、とんでもない目に合う系ブラックコメディーじみたホラー描こうとしていた人がいたんです。その作中に出てくる主人公キャラが絶妙にクズで、聞いてみたら、どうも「リアル知り合いを行動モデルにしている」と言っていました。
【マンスリー・セレブ】に出てくる主人公は、とにかく考えなしで自分に甘く、すぐ泣きギレて、このままでは魔女に煮て食われるって状態でも、アワアワするだけで自己解決を図らない、自分の可哀想アピールに余念がない、自分の悪い部分やズルイ行動、失敗は、ほぼ全部誤魔化す。
他人には厳しいし相手への要求も高いのですが、自分に甘く、自身はなにも頑張る気がないので、ご都合主義的な展開にな~んの警戒心を抱かない。害意を抱かれていると知っている美女(魔女)の用意してくれた睡眠剤入りの食事を、何も考えず『当然』のようにバクバク食ってピンチに陥(おちい)るシーンがあったように思います。
すごくB級ホラー映画並みの、ご都合主義的な展開メジロ押しなのに、自分に甘すぎる主人公だけが、その異常性を甘受する事しか考えていないので、どんどんドツボにはまっていく。主人公のクズさ、身勝手さや醜いまでの愚かさが「あー・・・・こういうやつ、いるいる」って解析度が高く、ワタシ的に高評価ポイントでした。
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ナルミは過去の自分の行動を悔いるくらいの分別はあるのに、衝動的でもなく、そのくせ上手くいかず、苦しんでいる。
ジャコウさんに暴力も振るわないのに突発的な欲望に対するこらえ性が無いらしい。でも異形の女性であるジャコウさんに、けっこう優しいっていうのがバラバラで、うーん?っとなった面もあります。
断言はできませんが、ナルミは「自分自身は○○で××な人間に違いない」と思い込む事でブレが出ている人物なのかもしれません。なんというか、ナルミという人間は、毒親のインプットとか、性格が悪い友人の洗脳とかで、自罰的になりすぎている実直系の人間である印象を持ちました。
小銭のくだりはクスッとなりました。本当にクズなら、その小銭を「少ない」と毒づきながらパチスロで溶かして八つ当たりするまで行く(笑)それかヤニ買う。奪っても許してくれるであろうジャコウさんから『奪わない』自制がある人間なんですよ。少なくとも「今のナルミ」は。まるで呪われているみたい。
ジャコウさんとの邂逅(かいこう)で、もうすこし呪いが解けて、ナルミがナルミに成れるシーン入れても良かったと思います。
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1人暮らしの汚い男所帯にわざわざ現れる美女って、漫画系では6割ゴキブリの擬人化キャラやと思うねん・・・・ご都合主義の現実サイドと言うか。
子猫を怖がるシーンとかに「正直、ゴキブリとか蜘蛛も怖いです」って入れてくれたら「あ、ジャコウさん、ゴキブリじゃ無かったんだ」ってなったと思います(笑)