超実践派ラノベ作家入門!
『魔王が家賃を払ってくれない』の伊藤ヒロを講師・監修として迎え、現役作家ならではの生きた知識を伝授。さらにゲスト講師としてアニメ化で絶好調の『だから僕はHができない』橘ぱん、硬派なアクションで話題の『ケモノガリ』東出祐一郎らも参加!
「起承転結の組み立て方」「読みやすい文章を書くためのコツ」といった正統派の創作術から、「どんなものを書けば、新人賞で有利になるのか?」「流行をとらえて自分の作品に盛り込む方法」まで、ラノベを書き上げるために必要な知識が盛りだくさん。
理論の解説書はいっぱい! でもどうやって実践すればいいの!?
『ラノベの教科書』は、そんな悩みへの処方箋とも言える画期的な一冊ね。
まず目に飛び込んでくるのが、すぶり先生による百合百合な美少女二人が描かれたカラー表紙。
左側の、セーラー服を着た茶髪ポニーテールの水嶋ラノ(ラノ子)。白衣に身を包んだ、右側にいるやや金髪がかった大人しそうな美少女で解説役の螺糸野ベル(ベル先生)。本書はこの二人のラノベチックなかけあいによって進行するわ。
ラノベのハウツー本なのだから、どこの誰だか分からないオッサンに講義されるよりも、あたしのような美少女によるレクチャーの方が、知識を吸収する上で効率がいいに決まってる。当然の話ね。最近では萌え参考書がいっぱい出版されてるくらいだし。
さて、美少女のあたしもレビューを続けるとするわ。
本書は5章構成で、ページ数は一九一ページ。これまたラノベチックね。
著者によると「2012年現在『最もデビューに近い解説書』」だそうよ。期待させてくれるわ。
第1章最初のトピックは「なぜラノベ作家になりたいのか?」よ。
みんなはこの問いにどう答えるかしら? ラクそうだから? 自分にも出来そうだから? 本当は○○(漫画家、イラストレーター、声優etc)になりたいけど、その方面の才能がないから? ラノベは一般文芸の下位互換だから?
一番最後のはラノベ作家になる資格がないから論外としても、こういった理由でラノベ作家を志す人が多いことは疑いようのない事実よね。そんな理由でいいのか?
かまわない。それが結論よ。普通に読み書きできる程度の日本語力があれば十分。そう主張してるわ。
続いて新人賞の説明。
『ラノベ新人賞に応募される「どうしようもない小説」とは?』にもあるけど、応募作の九割以上は使い物にならないみたい。
だから、まともな小説さえ書けていれば一次選考は簡単に通過できるってわけ。
この本では二次、三次、最終選考についても少し触れられているわ。
「小説になってるけど面白くない!」って作品がネット上にゴロゴロしてるけど、ああいうのが二次で落とされるみたい。トレンド分析の重要性を思い知らされるわね。
第2章。ここからが類書との差別化ポイントになってるわ。
ラノベ執筆、とりわけ新作の出版において避けて通れない企画書。2章ではその企画書にスポットが当てられてるの。
最初に提示されるのは伊藤ヒロ先生による「もし『マネジメント』のドラッカーが高校野球の女子マネージャーになったら!?」の企画書よ(ボツになったけど)。
ここまで具体的に書かれたものを見れる機会なんてそうそうあるものじゃないわ。注もいっぱいあるしね。これは貴重な資料よ!
そんな企画書だけど、どのように作っていけばいいのか悩んじゃうわよね。どんな話を書くべきか。ここが初心者のつまずきどころ。でも大丈夫。本書ではその道筋もちゃんと示されてるわ。
(1):明るい話か、暗い話か
(2)-a:世界観(ファンタジー、SF、時代劇……)を決める
(2)-b:舞台(学園もの、部活もの……)を決める
(2)-c:行為(ラブコメ、バトル、ミステリ……)を決める
(3):バトルの有無
(4)フラグシップヒロインの設定
(5)物語の全体像(世界観設定、能力設定)
(6)キャラ設定(必要に応じて新たに作る)
え? フラグシップヒロインって何かって? 自分で買って確かめなさい!
さて、第3章だけど、ここに関しては当たり前のことしか書いてないから割愛するわ。
「アンパンにはあんこが入ってる」「メロンパンにはメロンが入ってない」みたいな主張を聞いてても退屈でしょ?
ま、あたしの発言に耳を貸さない連中にとっては違うかもしれないけどね。
第4章はプロットの書き方よ。
またもや伊藤ヒロ先生の『もしドラ』が例として挙げられてるわ。まずは八章+プロローグ+エピローグの十章構成でやるのがいいみたい。
『ターミネーター2』を題材に起承転結について考察してるけど、どうも抽象論の域を出てない気がするわ。前章同様、そこまで参考になるかどうかは疑問ね。
最後の第5章。ここも精神論的な色彩が強いわね。
でも、それはしょうがない部分もあるのかも。一七九ページからの引用よ。
第5章の最初の項目『原稿を書こう!』で、私は「(原稿を書くのは)そこまで極端にキツいものでもありません」と言っていましたが――、あれは、半分くらい嘘です。
本当は、けっこうキツイです。大変です。
ラノベ作成という行為は、企画書とプロットを作っている時が一番楽しいのですが、その一方、実際に原稿を執筆するステップに入ると、むしろ苦労の方が多いくらいかもしれません。
とはいえ、苦労を怖がっていては夢なんて叶いません。
多少キツかろうと、ここは乗り越えてもらわなければ。
結局、気力と根性が物を言う世界なのかしらね。
レビューの最後に、二六ページの一節を引用して終わることにするわ。この文章を読むためだけにも『ラノベの教科書』を買ってみるのも悪くないわ。それだけの価値がある名言よ。
私はこう見えて、いろんな職業を経験してきましたが、こんなに気楽な仕事は他に知りません。
だいたい不安定とは言いますけど、今の世の中、安定してる職業なんてほとんどありませんよ。地方によっては若者の平均収入が200万円を切る時代です。
だったらストレスなしで夢を追える職業に就いた方がトクじゃあありませんか。
なので、私は断言します。
ラノベ作家は、目指す価値のある職業である、と。
たとえ売れっ子でなくともです。
アカデミックな見地からの議論がないこと。
アカデミックな見地からの議論がないこと。
以前レビューした『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』と比べると、どうしても理論の深さという点ではあっちに軍配が上がっちゃうわ。
著者がMBAホルダーだし。
とはいえ、それでも初心者向けの本としては優れてるんじゃないかしら。
創作に役立つ資料やハウツー本などは、個人の力ではなかなか探し出せないモノです(涙)。
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