ラノベの王女様一押し!(女性・17歳)
魔王様、ペン入れ手伝ってください!
囚われのお姫様がエロ同人誌作家!?
魔王城を震撼させるイチャラブファンタジー!!
転職して美人のお嫁さんと静かに暮らしたい。
そんなささやかな夢を抱いた、世にもやる気のない魔王様。
魔王らしく悪事を働けと迫るウザい側近をどう殺そうかと悩むだけの絶望的に不毛な日々を送っていたが――
「魔王様、お会いしたかったです! 」
攫われてきた姫・アンジェの可憐な容姿が超タイプ!
まさに理想の嫁候補キター!!
しかもなぜか初めから好感度激高で、遂に春到来!!
と、思いきや、姫様のご趣味は……
「陵辱もののエロ漫画を少々! 」
「は!?」
魔王もドン引きするレベルの成人向け漫画(汁多め)を描くことで!?
痴的好奇心旺盛の残念姫と、なし崩し的に原稿まで手伝っちゃう魔王のイチャラブファンタジー、開幕!!
側近が攫ったお姫様はエロ同人作家!?
この作品を言い表すには最適の一文ね。
タイトルを見れば嫌でも想像がつくように、本作はラノベによくある(どころか近年爆発的に増殖してる)魔王と勇者ものよ。
いい加減ににうんざりしてる読者もいるだろうけど、あたしはこのジャンルを別に嫌ってないから、気にせずレビューを執筆するわ。
なんといっても本作の目玉はヒロインであるアンジェ。
容姿は美しく、器量がよく、そして芸術に造形が深いと、まさに姫たるにふさわしい存在である彼女。立ち振る舞いもとても丁寧。完璧だわ。
しかし、冒頭で紹介したように、彼女は趣味で陵辱もののエロ漫画――叡智(えっち)の書――を描いているという、類稀なる二面性の持ち主でもあるの。
誘拐されておきながら魔王ディーに「次にどなたかを攫う時は、予告しておいた方がスムーズですよ」なんてアドバイスする抜けた側面を見せたかと思いきや、「らめええええええ特濃みるくで赤ちゃんできちゃうううううう! もう孕みたくないのっっほおおおおおおおおおおおおお!」と自作の漫画に書いてしまったり、ブログ(ネットがある!)で「しばらく知り合いの家に原稿合宿もといパラサイトしてきまーす。
三色昼寝アシスタント付きで、家主にはマジデ感謝が尽きない。童貞捧げてやるレベル。ま、お前らはせいぜいオナ禁して本の完成を待ってろよな(笑)」と日記をつける大胆さも。
このギャップが彼女の魅力を最大限に引き出してるわ。まるで一流のシェフが下ごしらえをした食材のごとく。
(以下ネタバレ)
『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』で飯田一史先生が分析していたように、「刺さる」キャラ作りには「残念」という「属性の提示」が有効だわ。『魔王と姫と叡智の書』はヒロイン以外にもそのメソッドが使われてるの。
比類なき魔力を持ち、魔物すべてを従えた強力な魔王でありながら、争いを好まず、将来は魔王としての職務を放棄し、愛する妻を見つけ、共に小さな家で暮らす転職生活を夢見る魔王ディー。
トゥイッターでつぶやきまくり、ネットにイラストを投稿しまくり、ジャージ姿でエロ漫画を描きまくり、あげくの果てには資料のために触手をスケッチするアンジェ。
魔王の側近でありながら、忠誠を誓うどころかからかいまくったり、ディーに彼女を自慢したり、やたら無茶ぶりをふっかけまくるレクトール。
古くから仕えるやり手のメイドだけど、貧乳で、エロ方面で魔王をおちょくりまくるヴァネッサ。
なぜか魔王を「ディー君」と呼ぶボクっ娘勇者、そして実は戦いをきっかけにメールとかして付き合うようになったレクトールの彼女サーシャ。
「剣と魔法の世界だけどネットがある」ってのもギャップの一つよね。ほんと感心させられる設定だわ。
お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
アンジェね。
一級品である純白のドレスを身にまとったその姿は、姫にふさわしいこと間違いなしだわ。まさに「ラノベのお姫様」ね。
この作品の欠点、残念なところはどこですか?
サーシャの登場が遅いことね。
カラーイラストにいるけど、出てくるのは二一九ページからなんだもん。もう終盤も終盤。次の巻が出るようならここが改善点よ。