まずはダメな例から紹介しましょう。
ネット小説などでは、タイトルを無意味に英語やローマ字、カタカナにしている作品が散見されます。
タイトルを付けた本人は、しゃれた感じを出しているつもりなのでしょうが、完全に逆効果です。
なぜならば、我々は日本人は英語やローマ字といった日常生活では使わない言語には、なじみが薄く、心理的な抵抗があるからです。
カタカナも硬い感じがして、読みづらいというデメリットがあります。
英語による例を上げてみましょう。
『The angel lost memory』
『記憶を無くした天使』
上の2つのタイトル。意味は同じですが、どちらが、より簡単に頭に入ってきますか?
間違いなく日本語のほうですよね。
英語だと意味が取りづらいという大きなデメリットがあります。
意味が取りづらいというのは、最悪の第一印象です。
中には、完全に読めない、理解できないという人もいるでしょう。
多くの日本人は、英語が読めないので日本語のタイトルの方が、わかりやすくて良いのです。
このデメリットを無くすために、少年ジャンプの人気漫画『ONE PIECE(ワンピース)』などは、タイトルにワンピースとフリガナを振ってあります。このタイトルがヒットに繋がったのは、物語最大のキーワードであるだけでなく、短くて単純なので理解しやすく、覚えやすかったからでしょう。
また、カタカナでワンピースだと、服のことだと誤解されてしまうので、英語で『ONE PIEC』にしたのだと推測されます。英語のタイトルにする場合は、本当にそうする必要があるのか? よく考えてから行なうべきです。
次にローマ字による例を上げてみましょう。
『Kiseki』
『奇跡』
これまた読み方は同じでも、印象はだいぶ違います。
上の『Kiseki』を一目見て、それが奇跡のことを示していると、すぐに理解できる人は希なのではないでしょうか?
『Kiseki』というローマ字は、まず頭の中で『きせき』という、『ひらがな』に変換し、次に意味を考えるという二重の作業を読者に強要します。
『きせき』という『ひらがな』は、奇跡の他に軌跡、鬼籍、輝石、と幾通りもの漢字に直すことができるので、非常にややこしいです。
タイトルを読んだだけでは、どの漢字が当てはまるのかサッパリ分かりません。
ただ、意図的に二重、三重の意味を持たせるのなら効果的です。
例えば、物語のキーワードが奇跡の他に軌跡、鬼籍、輝石だったりする場合は、おおっ! と読者を唸らせることができます。このような仕掛けを作るのなら、ローマ字によるタイトルはすばらしいものになります。
でも、それ以外での使用は、やめておいた方が賢明です。
カタカナによるタイトルは、硬い印象を与えるというデメリットがありますが、同時に、なんとなく高尚な感じを読む人に与えるというメリットもあります。
このため、わざと硬いイメージや高尚な印象を与えたい時などにも効果を発揮します。
カタカナをタイトルに使用する際は、この特徴が作品の雰囲気に合うか考慮してしてください。
ちなみに、ここで紹介したタイトルの決め方は絶対の基準ではありません。
英語やローマ字をタイトルにして成功している例もあるので、どうしても作品のタイトルを英語やローマ字にしたいんだ! という人も、気落ちすることはありません。
ただ、そうしないほうが無難であるというだけです。
例を上げてみれば。
●ノベルゲーム
『CROSS†CHANNEL(クロスチャンネル)』『To Heart(トゥハート)』『WHITE ALBUM(ホワイトアルバム)』『Phantom
of Inferno(ファントム オブ インフェルノ)』
●漫画
『BASTARD(バスタード)』 『AKIRA(あきら)』『YAWARA!(やわら)』
などがあります。ただ、これらはちゃんとしたプロが作った作品なので、タイトルを英語やローマ字にしても安心感がありますが、素人がこれを安易にマネすると「中二病患者が、ただ表面だけ格好良く見せようとしているな」と邪推されかねないので、注意が必要です。
カタカナによるタイトルを付けて、100万部以上を売り上げたライトノベルとして、2009年刊行の『ソードアート・オンライン』『IS―インフィニット・ストラトス』、2008年刊行の『ハイスクールD×D』、2004年刊行の『デュラララ!!』などがあげられます。
『ソードアート・オンライン』『IS―インフィニット・ストラトス』は、SF的なマシーンが物語の根幹にあるので、硬質なイメージを与えるカタカナのタイトルが合っています。『ハイスクールD×D』は語呂の良さと、物語に深く関わってくる「悪魔」と「主人公の能力」を表す意図から付けられたのだと考えられます。
アルファベットの単体は、何かの省略であることを我々は察するため、「これはどういった意味だろう?」とタイトルが謎めいた感じになって、小説本文を読み進めようという原動力になります。
このテクニックは一般文芸でも使われており、江戸川乱歩の短編集『D坂の殺人事件』というものもあります。また、漫画にもヒット作『頭文字D』などがあります。
『デュラララ!!』は語呂が良く勢いがありますが、意味不明の造語です。
意味不明な造語のタイトルを付けるという手法も広く一般的にあります。
例えば、少年ジャンプの『バクマン。』少女漫画の『パタリロ!』などです。
謎めいていてインパクトがありますが、意味不明であるため、読者に手にとってもらえるかはわからない、かなり博打な手法であると言えます。センスが必要になるので、安易にマネしない方が良いでしょう。
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