ライトノベルの起源は、18世紀末から19世紀にかけて発達したロマン主義にあるのではないかと考えられます。C.S.ルイスやJ.R.R.トールキンに影響を与えたファンタジー児童文学の先駆者、ジョージ・マクドナルドはドイツ・ロマン主義の影響を受けて、文学を志したと言われているからです。
ロマン主義とは、それまでの「キリスト教の教えは絶対だ! ローマやギリシャ文化こそ最高なんだ! それ以外は認めん!」という考え方をやめて、もっと自由にやろう、キャラクター重視(恋愛や苦悩などの個人の内面を描こう)でやろう、というものです。それまで軽んじられてきた、エキゾチスム・オリエンタリズム・神秘主義・夢など、ありていに言って、ファンタジー要素が題材として好まれました。
ロマン主義の作家たちは、過去に滅びた「ケルト文化」に関心を示し、ケルトを理想化したロマンチックな物語を創造しました。
ジェイムズ・マクファーソンのケルト英雄譚『オシアン詩集』(1762年発表)がその走りとされています。この作品は、ナポレオンやゲーテも愛読していました。
英雄ジャンル・ダルクが神から力を与えられ、敵国の士官との恋に苦しむシラーの戯曲『オルレアンの乙女』(1801年発表)もロマン主義です。この作品は、現代的に解釈すれば、恋愛とファンタジー要素に重点を置いたライトノベルです。
この作品の後、「ジャンヌたん、かわいそう」「聖処女、萌え!」と19世紀のロマン主義作家の萌え魂に火が付き、ジャンル・ダルクを題材にした作品が数多く作られました。ジャンヌは19世紀を代表する萌えキャラと言えます。
科学者が神をも恐れぬ研究に手を出して怪物を生み出す『フランケンシュタイン』(1818年刊行)、アンドロイド美少女萌えの『未来のイヴ』(1886年刊行)も広義ではロマン主義に分類されます。
過去の権威や価値観に囚われず、キャラクター重視で何でも有りの世界を描く、というのがライトノベルだと定義すると、ライトノベルはロマン主義をもっと過激にしたものではないか? と仮定できます。
文学などと言うと、堅苦しくて高尚な物をイメージしてしまいますが、実は、過去の名作とされるものは、その時代の権威から見たら『くだらない娯楽』であったというのが、真実です。文学史上最高傑作とされる『ドン・キホーテ』(1605年発表)は騎士道物語のパロディですし、『三銃士』(1844年発表)はドン・キホーテを元ネタにしたパロディを冒頭に仕込んでいます(三銃士の主人公はドン・キホーテに例えられて、笑いを取られている)。
ライトノベルの元祖『スレイヤーズ』(1990年刊行)は、従来の異世界ファンタジーのパロディ作品として生まれ、その後も王道を崩したパロディ的な作品が、ラノベ界ではたびたび人気を博しています。パロディというと、一段低い手法のように思えますが、実は傑作と名高い文学作品もパロディから生まれて来た、という訳です。
ライトノベルの源流は『妖精作戦』(1984年刊行)、元祖は『スレイヤーズ』言われています。
これらよりも古いラノベの起源的な作品を挙げると、筒井康隆の『時をかける少女』(1967年刊行)があります。
また、ファンタジーライトノベルのパイオニアである『ロードス島戦記』(1988年刊行)は、J.R.R.トールキンの『指輪物語』(1954年刊行)の影響を受けて考案されたTRPGのリプレイから生まれた作品です。こういった意味では、『指輪物語』がライトノベルの原典であるとも言えます。
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