16人も子供を産んだといわれる女帝マリア・テレジアや、“ケーキとダイエット"の美貌の皇妃エリザベートなどを輩出したハプスブルク家。その活力の源、華麗な宮廷料理のドラマを初めて明かす!
西洋ファンタジーで、「宮廷晩餐会を書こう」としても、イメージが湧かないことはありませんか。そこで役立つ1冊を紹介します。
この本で最も特筆すべきことは、主要な料理・菓子のレシピが書かれていることです。
ですから、ハプスブルク家の人々が何を食べていたのかが、巻頭にわずかとはいえカラー写真があることもあり、実によく分かります。また、晩餐会の進行、料理関係の宮廷役職、食器関係、上流階級にとってココア、コーヒー、紅茶、ワインの位置付け、電気冷蔵庫発明前の食品の保管についても書かれています。
食事を通しての世界観やキャラクターの生活を考える上でも参考になる1冊でしょう。「第一章 皇帝たちの食卓」で取り上げられた皇妃エリザベートは、ダイエット目的でかなりの偏食家です。この項は、医学的根拠全くなしの“自己流健康法”に走るわがままなお嬢様キャラ作りに役立ちそうです。
エリザベートに限らず、「第一章」では章名の通り、食卓を通しての皇帝・女帝たちの生活を描いています。ですので、宮廷の生活を考える上で役に立ってくれるでしょう。
菓子の記述もかなり詳しいので、宮廷晩餐会に限らず、カフェや洋菓子店を出す場合にも、使えそうです。
強いて挙げればですが、3点ほど残念な点を指摘しておきます。
まず、ヨーロッパ史に無知な私からすると、「神聖ローマ帝国」「皇帝が選挙で選ばれる」などと言われてもよく分かりません。料理を知る上では問題になりませんが、ヨーロッパ史の基礎知識があったほうがより理解が深まるのではないでしょうか。
次に、初出時に説明があるとはいえ、料理名をはじめとする専門用語が覚えづらかったですね。欲を言えば、巻末に料理一覧や詳細な事項索引、用語集を付けてもらえればありがたかったです。また、料理類はレシピ付きで詳しいのは良いのですが、「簡潔な表現」という点で参考になるでしょうか。描写がくどくなりそうで、心配です。
最後に、これは欠点ではありませんが、ハプスブルク帝国の首都が内陸のウイーンであることです。そのため、魚介類、特に海産物の記述はかなり少なく、あまり参考になりません。ベネチアやナポリといった沿岸部の都市を想定すると、「目の前に豊かな海があるから、おいしい魚を期待していたのに、肉料理ばかり出てきた」ということになりかねないでしょう。
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