日本の女性は何を纏ってきたか。
その服飾は時代ごとにさまざまな変容を遂げてきた。西域の香りを伝える奈良朝の色彩と文様、優雅な襲 (かさね) の色目、室町時代の辻が花、絢爛豪華な桃山の装束、そして慶長・寛文小袖と友禅染など洗練された意匠をしめした江戸の美意識。
本書は、古墳時代から江戸時代までの女性風俗を、髪型から衣裳まで完璧に再現。衣を見て歴史を読み解く「きもの」歴史事典。
古墳時代(卑弥呼のころ)~江戸時代後期までの、日本女性の服装・化粧を再現し、モデルが着用した写真集です。
最も特筆すべきことは「写真がすべてカラーであること」です。
服装史の本なのに、写真が白黒ばかりで不満に感じたことはありませんか。そのような方にお薦めする一冊です。カラーのアップ写真が結構あるので、着物の柄や髪型といった細かな部分がよく分かります。
例えば、奈良時代の衣装でベストの「背子(からぎぬ)」は、一見すると頭からかぶって着ているようですが、よく見ると肩の部分に合わせ目がある「前合わせ型」です。このような細かいところの確認は、白黒写真では難しいことです。
なお、全身写真も豊富ですので、衣装全体の雰囲気をつかむのも問題ありません。
古墳時代は、一種の巫女のようです。若干ならが装身具にも言及があります。
奈良時代の風俗については、「めざましい唐風俗の豪奢な世界」とあります。実際、掲載されている写真を見ても、「中華風ファンタジーのヒロイン」像からはかけ離れてはいません。そのイラストで、ヒロインが額に点を打ったり、花を描いたりした化粧を施しているのを見て、「あれは何?」と疑問を感じたことはありませんか。その化粧の名称も書かれています。
登場人物は宮女に限られますが、奈良時代はもちろん、中華風世界にも一定の参考になります。
平安時代は十二単で、鎌倉時代は女性の旅装束です。室町時代は、市場での物売り女性が取り上げられているので、庶民女性の服装を知るのに向きます。桃山時代は、秀吉の「醍醐の花見」です。
江戸時代は、江戸ではなく、京都の風俗が再現されていることを強調しておきます。また、後期の「京女の晴姿」では公家・武家の姫君・奥方・侍女も出てきますが、遊女・町人が主体です。
これは欠点ではありませんが、まず指摘しなければならぬのは、この本が書名通り「女性風俗史」であることです。したがって、男性は完全に対象外です。
また、各衣装の解説は、あまり細かいものではなく、専門的なので分かりにくいですね。なお、解説は本編中にも書かれていますが、編者あとがき「染織祭りとその衣装」の後半にまとめてあります。
ページレイアウトも悪くはないのですが、どうしても写真がとじ代にかかりかけ、やや見づらくなっているものが何点かあります。それらは残念ですね。
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