バラモン教の基礎の上に、インド先住民の民間信仰や習慣を取り入れて成立したヒンドゥ教。その神々は、ほかの宗教にはない、ダイナミックで人間くさいエピソードを数多く持っている。本書では、これらのヒンドゥ教の聖典に登場する魅力的な神々や魔族といったキャラクターを、丁寧に紹介していく。
帯にある通り、「ヒンドゥ教のキャラがこの一冊でわかる」本です。なじみが少ない分、新鮮さを感じられる方もいらっしゃることでしょう。
破壊神・シヴァや、殺戮の女神・カーリーなど、荒ぶるキャラが多いとの印象が強いです。その一方で、仏教で吉祥天・弁才天として信仰されている女神、ラクシュミーやサラスヴァティーといった穏やかなキャラもいます。
また、神が善、魔族が悪との、単純な構図ではなく、善悪がはっきりしないのが特徴です。そして、外見も人形(ひとがた)ではあるものの、腕が4本以上、顔が2つ以上あるキャラもざらです。
このようなキャラ作りの参考になるのではないでしょうか。
現在でも国家の保護受け、ネパールに存在する、少女の生き神・クマーリーに関して、役割、選考基準、その生活を取り上げています。
生き神はもちろん、巫女のように神に仕える存在の参考の一助になるでしょう。
ごく簡単ながら、力の得方や護符、沐浴の仕方も書かれています。
多くのキャラが仏教名を持っていることからも分かるように、ヒンドゥ教は仏教とのかかわりが深いのです。この点は、「全く書かれていない」程度の説明しかありませんでした。ですから、ヒンドゥ教と仏教との関係について、もう少しきちんと説明してほしかったですね。
また、これに関連して、仏教や神道に関する知識も多少はあったほうが良いのではないかと感じました。そして、なじみが少ないので、キャラ名が覚えにくく、少々苦労しました。
クマーリーについて、果たして現在(2012年11月)でも存在し、国家の保護が続いているのでしょうか。ネパールでは、2001年に王族殺害事件が発生し、これがきっかけで、2006年にヒンドゥ教も国教ではなくなり、2008年に王制が廃止されました。本書の親本は1991年の発行です。文庫化に際し、「全面改定を」とは言いません。しかし、これほど大きな変化があった以上は、何かしろの注記が必要ではないでしょうか。
キャラについては詳しいのですが、ヒンドゥ教の全体像がつかみづらいです。教義、戒律、修行、儀式、祭り、参拝作法、護符、インドの習慣の類は、割合簡単な記述で、バラバラに載っているコラムの形にとどまっています。同じ量・質でも、1章割いて、そこにまとめて書いてくれれば、まだ強い印象を持てたことでしょう。
すばらしいカバー絵に比べると、本文イラストは質が劣ります。
創作に役立つ資料やハウツー本などは、個人の力ではなかなか探し出せないモノです(涙)。
そこで、あなたのオススメの創作お役立ち本を紹介してください!
ご協力いただける方は、こちらのメールフォーム
『創作お役立ち本募集係』 よりお願いします。