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屍鬼
人口わずか千三百、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。 猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。 山深い集落で発見された三体の腐乱死体。 周りには無数の肉片が、まるで獣が蹂躪したかのように散乱していた―。 闇夜をついて越して来た謎の家族は、連続する不審死とどう関わっているのか。 殺人か、未知の疫病か、それとも…。超弩級の恐怖が夜の帳を侵食し始めた。
未だに土葬の習慣を残し続け、一片の変化も無いこの村に、突然移築された古びた洋館。 その洋館こそ、この村に現れた最初の「変化」だった。 いつまで経っても越してこない洋館の住人。 村に伝わる儀式の晩、村外から現れて消えたトラック。 ある日、唐突に破壊されていた村中の道祖神。 闇夜と共に引越しを終えていた洋館の住人。 山奥で発見される変死体。増えていく原因不明の死者。疫病の可能性。 更に、死者の陰でひっそりと消えていく村人達。 その事実を村中が不審に思いながら、誰もが口を閉ざしていく。 そして全ての「謎」が解けた時、村は既に避けられない終末を迎えていた……。 この作品を読むならば、まずは覚悟を決めましょう。 一度読み出したら、数時間は読む手が止まりません。 本書の解説にもありますが、この本にはそれだけの力があります。 ストーリーとしては、日常が「音を立てずに」崩壊していく、 その過程を一片も漏らさずに書き切っている群像劇です。 初めに描かれているのは、村人達の平穏な日常。 その日常に少しずつ違和感が生じていき、 それがやがて村中を覆う不安となって、村を崩壊させていく。 それが、怖い。本当に怖いです。 序盤はあくまでもゆったりと、平穏に時間が流れていきますが、 中盤に向かうにつれて次第に物語は加速していき、「謎」が解けた後は正に怒涛の展開。 物語の終末に向かって一直線です。 「謎」に対して、村人達が決死に抗った結果、村が崩壊してしまう。 その惨劇の過程と、村人達の心理、そして「向こう側」の心理にすら感動してしまう。 間違いなく、記憶に残る名作であると断言出来ます。 以下は、多大なネタバレを含みます。 物語中盤で存在が明らかになる「屍鬼」。 彼らは、土葬された棺桶から「起き上がった」死者、吸血鬼です。 けれど人間としての記憶・心を持っており、 「人の血を吸って生きる」事やその他の制限(日光に身を焼かれる等)を除けば、 完全に「人間」です。 しかし村人は、身近な人達を殺された恨み、何よりも自分達を殺そうとするモノへの抵抗心から、 屍鬼達を否定して、一切の容赦なく屍鬼の身体に杭を打ち込み殺していきます。 いつのまにか、屍鬼は泣きながら逃げ惑い、人間達は血眼で屍鬼を屠っていく、 そんな立場の逆転が起きていて、それも本書が持ちうる「怖さ」でもあります。
このキャラに感情移入する人は余り居ないと思いますので、 あくまで自分の個人的な好感ですが……。 「人間」として生を得ているものの、その奥底にどうしようも無い絶望と達観を持ち、 「それ以外」に共感する精神に、何故か感情移入してしまいました。 ラストシーンでの「生きる事」に関する台詞は、心と言うより「理性」に響く言葉です。 そして、その台詞こそが「屍鬼」の物語の大きなテーマでもあります。
文体もライトノベルに慣れている人だと読解が難しいです。 事実、私も結構解らない部分がありました。 加えて非常に長大(文庫で3000ページ前後)ですので、 長い物語を読んだ事の無い人にはオススメ出来ません。 登場人物がひたすらに多いです。端役合わせれば数十人は軽く超えると思います。 また、全てが日本名なので全員憶えるのは限りなく不可能に近いですし。 別に主役級の数人を憶えれば物語は理解出来るので、特に困るワケではないのですが……。 あと、文庫版を全5巻揃えると非常に高い(約3000円?)です。 財布の中身には気をつけた方が良いでしょう。
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シャイニングウィザード
内容(「BOOK」データベースより) いざなぎ流陰陽道三十七代目当主、奥物部善ノ介。 ゲーセンと甘いものをこよなく愛する善ノ介は、宗家を継がず、 保護者の美少女サクラとともに“拝み屋稼業”をしている――。 そんな善ノ介に仕事をまわしているのが、警察で働く才女、土御門かがり。 ある日かがりは善ノ介に、ちまたを騒がす“吸血鬼騒動”に関する資料を送ってくるが……!? 型やぶりな陰陽師を描くオカルト・アクション。
陰陽師としてスゴ腕の実力を持ち、それによって生計を立てている善ノ介。 そんな善ノ介がグローバルな魔術師たちと魔術・呪術で死闘を繰り広げるストーリー。 それぞれのスタンスを持った、スタイリッシュなキャラクター描写。 テンポよく軽快、それでいて白熱したバトル描写。 『オカルト』を題材に扱った小説にありがちな「うんざりするような長広舌」もなく、 造詣深く、かつ過不足ない説明で、その手のモノに疎くてもすんなり楽しめます! 未読の方は、是非一度手にとって見てください!
極度の甘党で暑がりでゲームマニア。 サクラ(保護者)がいないとマトモな生活おくれないほどのぐーたら青年。 けれど、魔術師でありながら魔術・呪術のネガティブな面にはけっして染まらない、 熱い信念の持ち主です。
スーパーファンタジー文庫の『ハルマゲドンバスターズ』の続編に当たります。 ただ『ハルマゲドン〜』を未読でも全然問題無い構成になっていますが。 (私自身前作は未読だったりします^^;)
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ジュリエットと紅茶を―ようこそ、呪殺屋本舗へ
紅茶専門店『ティーコジー』。 女子高生店長の小泉鏡花と、青年・波多野康祐が営むこの店の裏の顔は、 依頼人が指定した人物を呪い殺すという触れ込みの『呪殺屋本舗』。 ある日、店を訪れた小学生の依頼人・留美。 彼女が指定したのは、既に死んでいるはずの殺人犯だった。 留美の必死の訴えで依頼を引き受けた鏡花たち。 彼の死について調査を進めるうち、その裏にある大きな陰謀に巻き込まれ…… 2006年度ロマン大賞佳作受賞作。
が第一印象。 本当に帯に書いてあるとおりのオカルティックコメディ。 こんなに笑ったオカルトは、未だかつて見たことがありません。本当に。 コバルト文庫なので男性の方は買いにくいかもですが、 これは男性の方でもいけるのではないかと思います。 とにかくオカルトとしての面白さとコメディとしての笑いがなんともいえないですよ!! いい具合に均衡が取れていると思います。
彼の地味に不運だったりツッコミキャラだったり。 そういうところが個人的にかなりツボだったんです。が…… お好み焼きを作っているその姿にホレました。 彼はお好み焼きの勇者です。
今まで理論系呪術でひっぱっていたのだから、最後までそれを貫いてほしかったです。
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あれ!? その小説、もしかして105円で売られていない? |
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