ヴァリオンさん一押し!(男性・25歳)
嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった……はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ!
奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。
映画化で話題のハイテンポな都会派サスペンス!
著者の持ち味ともいえるのは、コメディー映画のような軽妙なストーリーの中に、自閉症の子どもや、中学生のいじめといった、活劇とはそぐわないように見えるテーマを、違和感なく滑りこませている点である。
社会から異端視されている者たちを、シニカルにではなく、爽やかに描いてきた著者は、本書においても「正しいことが人をいつも幸せにするとも限らない」と高らかに宣言する。
どこまでも明るいギャング団の奮闘の影には、そんな著者からの深遠なるメッセージが見え隠れしている。
(中島正敏)
まず最初に…これはラノベではありません!(何
コメディ色の強い娯楽小説なのですが、お話の構成(特に伏線の張り巡らせ方!)がひっじょぉぉに精巧で、王道かつ痛快な展開に時間を忘れてのめりこんでしまったので、ぜひともこの場をお借りして紹介させていただきます!
ジャンルとしてはサスペンスもの…と言われていますが、いわゆる推理で密室でバーローな感じとは一線を画し、一言で言い表すなら「ルパン様御一行・但し全員スタンド使い」そう、タイトルの通り主人公たち4人組は悪党―――特殊能力を持った4人組の銀行強盗です。
ここで「え? 能力モノならラノベじゃないの?」と思われる方もいらっしゃると思われます、が、しかしこのギャングたちは全員いい年齢のおっさん二人とおばちゃん一人、あとはガキンチョっぽいハタチのイケメン一人のなんともハードボイルダーな面子。
萌え? お色気? 何それおいしいの?? って具合ですが、全編に渡って繰り広げられるブラックジョーク満載の会話や先述した秀逸な伏線の妙技は一読の価値アリですよ。
さて、ではここでメインキャラたる強盗一味の紹介に移りたいと思います。
まずはギャングたちのブレーンにして「相手のウソを必ず見抜く」力を持った切れ者のおっさん、成瀬。いい歳した公務員なので汗は舐めませんよ。
数手先まで見越して綿密に立てる彼の策謀は一種の快感すら伴うほど。
常に冷静で紳士的ながら内に秘めた熱いものに、僕は惹きつけられました。
続いて成瀬の同級生で喫茶店のマスター・鏡野。「口から先に生まれた」を地で行く演説家で、強盗のさなか巧みな演説で人質たちの意識を全て自分に向ける役を担います。
いわゆるネタキャラ、コメディリリーフ担当で、皆から(奥さんにまで)バカにされては下らないジョークを飛ばしていますが、非常に憎めない、登場するだけで笑いを誘う非常に「オイシイ」ポジションです。
続けては紅一点。「秒単位を正確に測る完璧な体内時計」を持つ主婦・雪子。
ストイックな性格で鏡野のツッコミ役になる事が多いおばさんです。
彼女の精密な体内時計が強盗の成功率を100%に保っていたのですが……
ここからはネタバレになるので本編でお楽しみください。
最後に4人のマスコット的存在で、スリの天才・久遠。
ハタチにしてはやや幼い、動物好きの青年で、強盗で得た稼ぎは全てNZへの旅行代に費やしてしまうほど。
鏡野のトンチンカンな言葉に被せてボケるムードメーカー。
彼のスッた財布や免許証が物語を思わぬ形でけん引していくことになります。
ストーリーについては…すみません、キャラ紹介以上のネタバレをやってしまうと面白さが激減してしまうため、詳細は控えさせていただきます。
どこか憎めない悪党たちの活躍、終盤に繰り広げられる予測不可能な怒涛の展開、思わず読み返したくなるスルメ的な面白さ……普通のラノベはもう飽きた!という方は、ぜひともお店に凸してください!!
以上、若輩者故乱筆ながら、ヴァリオンが「陽気なギャングが地球を回す」をご紹介させていだだきました。
お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
上でも述べましたが、演説家の鏡野が一番のお気に入り。
とはいえ全員魅力的すぎて「あえて」一人を選べば、ですが。
考え方が小市民で生活感に溢れ、くだらないことをさも国歌独立を宣誓するかのごとく語る饒舌っぷりがたまりません。
愛すべきおバカ、でも決めるところはバッチリ決める、かっこいい3枚目を地で行く彼こそ、この作品における真の主役ではないか! とさえ思えるのです(ゴメン嘘
この作品の欠点、残念なところはどこですか?
やっぱり美少女が一人もいない、というのは残念賞を贈らざるを得ないでしょう。
文章・描写が簡潔ながら非常に丁寧なので、この方がかわいらしい女の子を書かれたらさぞ魅力的だったと思うのですが…