魔音仁さんの質問
第1研究室でうっぴーさんは、
「ストーリーを作る時、主人公以外の登場人物の心情は描かず、時間を過去に遡らせてはいけない」
とおっしゃっていましたよね?
ですが、上遠野浩平さんの「ブギ―ポップ」シリーズでは、キャラの視点が次々に入れ替わるという型破りなシステムが採用されています。
また、「ビートのディシプリン―SIDE2」では普通に主人公の回想シーンがありました。
これらのことは、プロの作家さんだからこそできる技術なのかもしれませんが、ライトノベルとしてはアリなんでしょうか?
● 答え ●
ライトノベルとしては有りです。
でも、デメリットがあるので、それを知った上で使うべきだということです。
よく「幼児はみんな天才だ」などと言われます。幼児に絵を描かせると、技術や常識の枠に囚われない自由奔放な絵を描きます。
その絵を見て、これこそが心の内面をありのままに表現した真の芸術なのだと、手放しで喜ぶ人がいます。
でも、幼児の描いたメチャクチャな絵を、お金を出して買いたいと思う人は誰もいません。
ところが、同じメチャクチャで意味不明な絵でもピカソの描いた作品には億の値段が付きます。
幼児の絵と、ピカソの絵は、同じように見えてまるっきり次元の違うモノなのですね。
これは、どんな分野に関しても言えることです。
定石を知らずして定石を破ることはできません。
型を知ってから、型を破るから型破りなのです。
まず正しい基本を身につけ、十分にそれを自分のモノとしてから、基本を崩す。
このプロセスを取ると、それは調和を保った表現となります。
ライトノベルの中には、時点移動を使用している作品が山ほどあります。
大文豪・夏目漱石の『こころ』だって、「先生と遺書」の部分で一気に過去に時点移動します。
国木田独歩の『牛肉と馬鈴薯』なんかも時点移動を使っています。
時点移動を使用しているという理由でそれらを駄作だと言う人は、まずいません。
しかし、それはプロだからできる技です。
経験も技術も足りない素人が、時点移動のデメリットを知らずに多用したら、それはまず間違い無く失敗作になってしまうのです。
もし、使用するのでしたら、時点移動のデメリットを自覚し、わかりやすい構成になるように工夫してください。
キャラクターの過去を描写するのに便利だからと、無頓着に時点移動を使うと、それは幼児の絵になります。ご注意を。
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