プロ作家の中には、プロットを作らない、プロットを書くのが苦手だ、と言う人もいます。
例えば、ライトノベル作家の茅田砂胡(かやた すなこ)さんは、代表作『デルフィニア戦記』の第5巻あとがきにて、次のように語っています。
私はプロットが書けません。
プロットとはああなってこうなってこういう展開になってこう終わる、というものです。(と、私は解釈しています)
普通、書き始める前にこのくらいは決めなきゃいけないんですが、たまにはできる時もありますが、滅多にできません。たいがいいきあたりばったり方式です。
異郷の煌姫―デルフィニア戦記〈5〉
このように語っておられますが、我々の尺度でこの言葉を鵜呑みにしない方が良いです。
『デルフィニア戦記』の第1巻の背表紙には、以下のような説明書きがあります。
刺客に追われる漂泊の戦士ウォルと異世界からの迷子リィ。剣戟のさなか孤独な二人の戦士の偶然の出逢いが、デルフィニア王国の未来を、アベルドルン大陸の運命を大きくかえていく。やがて『獅子王』と『姫将軍』と呼ばれることになる二人の冒険譚はここからはじまる。
放浪の戦士―デルフィニア戦記〈1〉
第1巻では、主人公ウォルとリィは、軍隊も領土も持たない単なる流れ者でしたが、第4巻のラストで大国デルフィニアの国王と王女になります。
『獅子王』と『姫将軍』とは、ここから更に先の話であり、4巻のラストで彼らが国王と姫になることは、最初から決めてあるわけです。
そうなれば、4巻までは主人公が王座を手に入れるまでの展開を、どうすればよりおもしろくできるか? 敵がどんな陰謀や妨害を繰り出して、ウォルとリィがこれをどう撃破するのか、考えれば良いということになります。
プロットを書くのが苦手な作家さんも、通過点と最終的にどうなるかだけは、ちゃんと決めてある訳ですね。
また 第2回講談社ラノベ新人賞〈大賞〉を受賞した幹さんは、当サイトの「どのような方法でプロットを作られていますか?」というインタビューに次のように答えています。
アマチュア時代はほとんどプロットを作らなかった、というか作れませんでした。
頭の中で、いくつかの通過点と着地点は決めてましたが、あとはとにかく流れで書いていましたね。
プロになってからこれはいかんということで、なんとかがんばって作っています。
といってもそれも、キャラクターや世界の概要と、全体の流れを書く程度のものですけれど。
もっとちゃんとしたものが作れるようになりたいんですけどね。
第2回講談社ラノベ新人賞〈大賞〉 幹さん
また、『ラノベ作家の処世術』というラノベ作家デビューした人向けの情報を発信するサイトを運営しているプロ作家のRETUさんは、プロットの作り方について以下のように答えています。
自分が書きたい大体のイメージ(魔王が勇者を倒すストーリーなど)、どんでん返しとオチを作ったら、それでプロット完成です。
もちろん、設定や世界観も考えますが、それらは後からガンガン追記していきます。
勢いを重視するスタイルです。
RETUさん
最初に着地点と、そこに至るまでに必要な通過点を考えている訳ですね。こうしておけば、執筆中にその場の勢いやノリで細部が変わったとしても、ストーリーがぶれるのを防ぐことができます。
プロット作りが苦手な人も最低限「通過点」と「着地点」だけは、決めておきましょう。
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