比喩を使った文章に頼らないで、女の子を美少女だと表現する技があります。
それは周りの人間の反応を利用するという手です。
そのお嬢さんは美少女なのですから、まわりの人間は当然、美少女として扱うはずですよね。
ほれぼれと見つめたり、憧れたり、はっと息をのんだり、邪な思いを抱いたり、「綺麗だね」と賞賛したり、美貌に嫉妬したりといった反応です。
こういった反応を周囲の人間にさせることによって、読者にそのお嬢さんを美少女だと印象づけることができます。
この周りの人間の反応を活用して、ヒロインの美少女っぷりを見事に表現しているライトノベルがあります。
角川ビーンズ文庫の『海賊と人魚姫』(2002/09刊行)です。以下、例として本文を抜粋しますね。
ヒロインのイルは、パーティー会場で、パーティーの参加者達に美しさを褒め称えられます。
この世の七不思議のひとつ。
――なんでおっさん連中は、そろいもそろって同じセリフを言いたがるんだ?
(中略)
「いはや、まことに美しい」
「まさに海の宝珠と呼ぶにふさわしいお方ですな。イル様は」
「あ……あはは。どうも――」
笑顔を浮かべたまま、イルは自分の手にグッと力を込めた。
角川ビーンズ文庫の『海賊と人魚姫』
会う人間はことごとくヒロイン・イルの意志とは無関係に、彼女の美しさをたたえ、あるいは嫉妬します。
これにより、下手な描写より、よっぽどヒロインが美しいことが伝わってきます。
例えば、一人称でヒロインが自分を「美しい」と評価しても、「そう思い込んでる自信過剰な奴」という印象を与えます。
三人称で著者が地の文を使って「美しいのだ」と力説しても、それは解説に過ぎません。
その点、他の登場人物が「なんという美しさ!」と評価すれば、作中の人物間で客観的な評価が加えられるため、読者はキャラクターの美しさに納得することができるのです。
少年向けレーベルでは石踏一榮の人気ラノベ『ハイスクールD×D』(2008年9月刊行)の主人公、兵藤一誠が、学園のアイドルであるリアスや、アーシアといった美少女たちと仲良くなったのに対して、友人達が猛烈に嫉妬するというシーンが出てきます。
俺たちが憧れている美少女たちとお前ごときが仲良くしやがって! という心理です。
これによって、リアスやアーシアの美しさ、人気の高さが表現されています。
また、学園物では美少女のファンクラブなどが結成されているのも一種のお約束です。
崇拝者の集団を作ることで、その娘がいかに優れた存在であるか、伝えることができます。
男の嫉妬ではなく、ヒロインの美貌に嫉妬する女性を登場させることによって、ヒロインの美しさを印象づけた作品もあります。
童話の『白雪姫』です。
「鏡よ鏡。世界で一番美しいのは誰?」
『それはあなたの娘の白雪姫です』
「きー!悔しい!!ぶち殺してやるわ、あの小娘!」
といった継母の王妃と魔法の鏡のやりとりは、白雪姫の美しさを間接的に表現しています。
こちらも見習うべきテクニックと言えますね。
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