ダン・シーネンさんのコラム 2014年09月14日
宇宙戦艦ヤマトのワープについて相対論的に考察を試みます。以降、原作の固有名詞は借用しますが、優れた原作に敬意を表し、原作とは無関係であることをお断りしておきます。原作の描写を見ると、未知の物理法則が発見・解明されている等があるようです。
15万光年離れた場所まで1年で行って帰ってくるとします。ヤマトは瞬時に光速度の99%まで安全に加速でき、ワープは突然消えて、行きたい場所に突如として現れることができるものとします。
退屈になりますが、特殊相対論の基本から。数式は省略して、踏まえておくべきなのは「時計の遅れ」「ローレンツ収縮」「同時刻の相対性」の三つです。「同時刻の相対性」は特に重要で、相対論の絡みのパラドクスはほとんどそれ絡みです。
【時計の遅れ】
自分に対して速度を持つ物体の時間の流れる速さ、つまり時計はゆっくり進みます。光速度の99%で飛ぶ時計の1秒はこちらの時計の7秒にもなります。言い換えれば、向こうはこちらの1/7もゆっくり時間が進みます。
【ローレンツ収縮】
自分に対して速度を持つ物体の長さは短くなります。光速度の99%で飛ぶ物差しは、長さが1/7に縮んでいます。しかし物差しからすれば自分は縮んでおらず、他が1/7に縮んでいて、目的地の距離まで1/7になります。
すると、ヤマトが光速度の99%で飛ぶと、目的地までの距離が1/7になります。15万×1/7≒21,428、2万1千光年、到達所要時間は2万1千年以上です。もし光速度の99.9999999999%なら、0.22年以下です。
往復では0.43年、5か月ちょっとくらいです。でも、地球では30万年以上経っています。これが相対論関連でよく言われる「未来に行ける」「どんな遠い所でも生きている間に行ける」といった話になります。
それで「双子のパラドクス」なんて出てきますが事情あって割愛。地球で待つ方はヤマトが普通に光速度未満飛んでいく限り、どうしても往復で30万年以上待たねばなりません。それは困るのでワープしますが、落とし穴があるのです。
【同時刻の相対性1】
ヤマトが地球近くでバンと大加速するとします。目的地までは近くなり、ヤマトから見た地球や目的地の時計はゆっくり進みます。でも、もう一つ奇妙な現象があり、目的地の時計が一気に進んでしまうのです。
【同時刻の相対性2】
一気に光速度の99%まで加速すると、15万光年彼方の目的地の時計は10万年以上進んでしまうのです。このため、ヤマトからすれば5万年以下で往復できるのに、地球では30万年以上経ってしまう理由です。
参考資料・同時という概念の相対性
ちょっと待て。だとすると、地球近くで光速度の99%で加速したヤマトは、ワープしてパッと目的に着いても10万年以上経っちゃってるじゃないか。もし原作でこれが起きたら、イスカンダルもガミラスも滅んだ後でしょう。
仮に考古学的調査を行い、目的の物を発見できたとします。でも地球でも10万年以上経ってしまっているのです。焦って来たときと同じく、一気に光速度の99%まで加速した途端、地球ではさらに10万年以上時間が進みます。
ワープしても20万年後の地球。もう人類はヤマト待ってません。しびれを切らしてどこかへ移住しちゃってるでしょう。これではいけない。何か方法はないか。実はあります。地球へ向けて加速したからいけなかったのです。
実は地球に向けて光速度の99%まで加速したとき、後方15万光年彼方は10万年以上昔になっているのです。解決策が見つかりました。地球からさらに離れる向きに光速度の99%まで加速しておいて、地球までワープすればいいのです。
これなら地球では1年以内にヤマトが帰ってくることになります。めでたしめでたし。だが、本当にそうだろうか?地球から目的地と反対方向に光速度の99%まで加速し、目的地へワープしたら10万年前の世界に着いてしまいます。
もし原作でこれを行えるとするとどうなるか。地球はガミラスが攻撃を開始する10万年前にガミラスを攻撃できます。ガミラスにはまだ文明はないでしょう。圧勝です。だが、本当にそうだろうか? ガミラスだってそれは知っているはず。
彼らは先手を打って、10万年前の地球を征服しようとするでしょう。それを予期した地球はさらにその10万年前に。地球やガミラスという惑星ができる前でも終わらず、さらに過去へ過去へ戻る競争を繰り広げることになります。
宇宙の誕生、ビッグバンに辿り着くまで競争は終わりません。でも原作ではそんな気配すらない。光速度の99%なんて使わない紳士協定はないでしょうから、原作の宇宙ではワープがあっても過去へ戻れない物理法則があるようです。(終)
○上記記事は、ダン・シーネンさんが、
http://togetter.com/li/518360
にまとめられた記事を当サイトの交流用掲示場に投稿した物を転載したものです。
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とりあえず、難しい理論はどこかに置いておくとして、私程度の頭のレベルでお話しします。
別の場所でも書いてますが、「旧ヤマト」では、最初にワープした時に、ヤマトが恐竜時代を通過している描写があります。
「銀河鉄道999」でも、ワ-プ中の異次元で新旧2台の999が衝突事故を起こしています(同時代の列車ではないのは、メーテルに随伴している少年の持つ戦士の銃が、鉄郎の物と同じシリアルでありながら、鉄郎の持っている銃には無い傷がある為で、この事から鉄郎の乗る999より未来の存在である事がうかがえます)。
そもそも、ワープ空間がどういうものであるかは、明確な解答が無いのですが・・・。
ドラえもんの出した未来の三輪車は、四次元に入る事で、全ての障害物を通過してショートカットが出来ましたが、その際に、
「あちら(四次元)からは見えるが、こちら(三次元)からは見えない。」
という、一方通行の奇妙な視認が出来ました。
また、新旧のヤマトに登場する次元潜航艇は、次元の狭間に潜れますし、発射する魚雷は次元の壁を超えて移動します。
そして、旧ヤマト3の波動爆雷は、同じく次元の壁を越えて次元潜航艇に直接命中弾を与える事が出来ます。
次元の壁というのは、果たしてそんなに簡単に越えられるものなのでしょうか。
そもそも、旧ヤマトで真田技師長は、
「ワープに失敗すれば、この宇宙が吹っ飛ぶ可能性がある。」
と発言しています。
そんなに簡単に、ワープって出来るものじゃないはずなのですが。
また、「のび太と鉄人兵団」では、リルルに誘導されたロボット兵団が鏡の世界に到着しています。
表の世界から、いつどうやって鏡の世界に侵入したのかが謎です(ザンダクロスはのび太が鏡世界に持ち込んだものなので、表世界の存在ですし、それをよこしたロボット兵団も、当然ながら表世界の存在です)。
また、「のび太の魔界大冒険」では、パラレルワールドの世界である魔界の魔物が、タイムマシーンの出入り口を通り、時の流れを泳いで、本来ののび太の世界へ現れたりしています。
さらに、ドラマ「漂流教室 ロングラブレター」では、最終回のラストで、雷のエネルギーを利用して、過去へメッセージカプセルを送り、その結果、荒廃した未来世界が緑に包まれるという描写で終わります(その際、科学オタクの女子高生が、光の速度を超えればどうたらと、ごたくを並べています)。
仮に、光の速度を超える事で時間や亜空間の移動が可能だとしても、
「行きたい(戻る)時代や場所を、どうやって見つけるのか?」
という問題が残る訳ですが、それについては、説明されている作品が一切存在していないので、検証の仕方もありません。
ドラえもんは言うに及ばず、T・P・ぼんのタイムパトロールも、タイムボカンもゼンダマンもオタスケマンもヤットデタマンもイッパツマンも、ヤマトもトップをねらえもアラレちゃんも、その他もろもろの全ての作品が、機械任せになっています。
その機械が、どういう仕組みで目的の時代を探して出入り口を開けているのか、全く不明です。