■質問2015/01/19
余りにも定番な設定であると、何かのコピーのようで萎えることが多いのですが、むしろ私の感性がマイノリティーなのでしょうか……。
●ジジさんの回答
仕事にしたいと思う人には大事な感覚かと思います。
ただ、ここに縛られるとなにも思いつかなくなってしまう危険性もありますね。
ですので、たとえば3つの要素でひとつの物語を構成することにします。その内の2つはあえて既存のものにします。最後のひとつは、誰もまだ目をつけていないオリジナル設定にします。
読者に届く斬新さというものは、スイカにかける塩のようなものです。読者に安心して斬新だと言ってもらうには、斬新なだけではだめなのです。「読者が共感や安心できる要素が練り込めていたかどうか」がカギになります。
■質問2014/09/29
既存作品にインスパイアされた作品が受賞することはないとおっしゃっていましたが、既存作品の模倣であるかは、どのあたりで気付かれるものなのでしょうか?
●ジジさんの回答
設定がインスパイアならあらすじを見た時点でわかります。
キャラのインスパイアはセリフをいくつか見ればわかります。
ストーリーのインスパイアは設定と同時にわかってしまうことが多いですね。
つまり、インスパイアは「設定を見ればほとんどの場合は一見してわかる」ということです。
とはいえ、これだけの既存作があるラノベ世界ですので、自分がまったく知らない作品のインスパイアがあることもあります。
その場合でも、必ず他の下読みや編集者が気づきます。
■質問2014/09/29
自分が一から考えたストーリーが既存作品に似てしまうこともあると思います。その場合も、模倣と判断されるのでしょうか?
●ジジさんの回答
この場合、あまり気にせず書いてしまうのがよいかと思います。
「結果的に似た部分がある」というのは「似たものを書いた」のとはまったく違いますので。
●ジジさんのコラム 2014/07/14
読者がこの設定の作品を通じてどのような得(カタルシスや読後感)を得るのかが最重要課題になります。
読者目線で「得」のない物語は、結局のところ作者の自己満足で終わります。
読者の得は、斬新さやめずらしさがあれば成立するものではありません。
目にしたとき、「こんな設定/展開があったか!」と思えるだけの驚き――作品の魅力がなければなりません。
ですので既出ではない、ということよりも、むしろドラマ性においてのひねりが必要になってくるものと考えています。
■質問2014/07/04
王道物(異能物)は受賞において不利であるか。
様々なジャンルが溢れかえる最近において、いまさらボーイミーツガール兼超能力バトル物、コッテコテの王道というのは仮に光る物があったとしても時代遅れと判断されてしまうでしょうか?
●ジジさんの回答
異能物は現在でも応募数の多いジャンルですので時代遅れではありませんが、既存作含めてライバルが多く、競争率の高いジャンルであると言えます。
しかし、ラノベの正義は想像しやすさであり、プラス方向、マイナス方向問わずの勢いのあるおもしろさですので、それが打ち出せていればまずは大丈夫です。
その上で同ジャンルの他作品といかに差別化し、さらには完成度の高い既存作とも差別化し、「ありきたりなネタをここまでひねってきたか!」と審査側を驚かせられるものにできるネタ力を見せられれば最高ですね。
■質問2014/07/03
文体、独特のセンスなどの、作者としてのオリジナル性は高いほうが受賞確率は高いのでしょうか。
●ジジさんの回答
スタイリッシュの域に留まっているなら武器になるかと思います。
ただ、投稿作品でこれに挑戦されている方のほとんどが失敗していますので、私としてはこの部分ではなく、設定(ネタ)の部分で差別化を考えていただきたいところです。
■質問2014/03/26
寄をてらう、とオリジナルの違いは何でしょうか。
●ジジさんの回答
奇をてらう=ありがちな設定をよくわからない屁理屈や奇抜なだけのキャラでやらかしてしまう。
オリジナリティ=他人と同じ素材を、角度を変えて調理できている。
■質問2014/03/26
「設定や世界観などがありがちである」そう思わせないために注意すべきは何ですか?
●ジジさんの回答
ありがちなテーマをあえて取り上げ、「他人とは角度を変えて描く」ことを心がけてみてください。
いつも榊一郎氏を引き合いに出してしまうのですが、氏の『アウトブレイク・カンパニー』(講談社ラノベ文庫・2011年12月2日刊行)は、支倉凍砂氏の『狼と香辛料』が切り開いたファンタジー+商売という図式に「オタク」を混ぜ込み、しかも普通ならこちらの世界での商品として扱われるだろうファンタジー世界の住人を「客」とし、オタク文化を売り込むという角度の変えっぷりを実現しています。
ここで大事なのは、独自性とは「ただ斬新なもの」ではないということです。
「すでに存在する要素」に「今までなかった要素」を少し加え、読者に理解しやすい演出をしたものこそが独自性だと考えてください。
●ジジさんのコラム2014/01/11
オリジナリティは斬新さだけのものではありません。
作者がここを見せたいと押し出したものが、読む側に「こんなあたりまえの素材をこんな角度から見せてきたか」と感じさせる「意外性」です。
■質問2014/01/04
物語における要素として文章、キャラクター、物語の構成、設定などがありますが、このうちオリジナリティとはどこに出せば良いですか?
●ジジさんの回答
『設定に出すべき』です。
設定は最初にうまく押し出せていれば審査側を「おお」と思わせることが可能。あとはそれをブレさせずに最後まで使い続けられればかなりの結果が期待できます。
ぜひ、どこかで見たような作品で受賞を狙おうなどと思わず、オリジナリティを追求してください。これは断言しますが、既存作のパロディしか書けない作家に将来性はありません。
●ジジさんのコラム2014/01/04
他作品との差別化とは、「同じ素体をいかに他人と違う方向から見て描けるか?」がポイントになります。
ここで重要なのは、どのような手法を使うにせよ、それは読者が想像しやすいフォーマットの中で行わなければならないということです。魔法なら魔法という枠内で、「こんな手があったか!」と思わせなければ失敗。
また独自性とは、「誰も書かないもの、組み合わせを見つける」ことです。
例えば、有川浩氏は、「図書館の理念」を「言葉狩りの横行する世界の中で、武力をもって守り貫く」、「長身女と低身男のぎこちない恋愛」というドラマで描き出すという『図書館戦争』(2006年2月)を生み出しました。 ここで注目すべきは、『図書館戦争』を構成する要素の66パーセントがすでに存在するものであるという事実です。
読者がまったく知らないものばかりで構成しては、単なる「斬新なもの」でしかありません。「作家の独自性とは読者が理解できて初めて独自性たりえる」のです。今までなかった斬新なものとは、今までにもあったものに練り込むことで初めて光っていることが読者に伝わります。
■質問2013/10
オリジナリティや独創性がどういうものなのか、ご教授願えればと思います。
●ジジさんの回答
ぶっちゃけ私は、「その年、ほかの応募者が考えつかなかったキャラ、世界観、展開、ジャンルを提示できること」だと思っています。
賞というものは「他作品との比較」で上に登っていくレースです。だとすれば、多少以上にマイナスがあったとしても「他作品にないもの」が強く押し出せていれば、それを手がかりに登れることが多々あるのです。
そして、その年に誰も考えつかなかったその応募者の要素は、翌年以降はスタンダードとして加えられることになります(パクリ/インスパイアの種になるという意味で)。
■質問2013/10
他の作品との差別化はどのようにすればできる?
●ジジさんの回答
「同じ素体をいかに他人と違う方向から見て描けるか?」になります。
例えば榊一郎氏の『ストレイト・ジャケット』という作品がありますが、「魔法を使うと人間は人間の形を保てず溶けて、異形の悪魔になる」という設定でした。そしてそのために「鋼鉄の鎧で人を鋳型にはめることで、溶けるのを防ごうとする」わけです。魔法というありふれたネタに対する認識を打ち砕かれました。
■質問2013/10
作品の差別化に取り組んでいる作家志望に向けて、注意点やアドバイスなどがあれば教えてください。
●ジジさんの回答
一般・ラノベ問わず、差別化もあまりに捕らわれると自己満足になりがちです。
知り合いにアドバイスをもらうという方も多いかと思いますが、アドバイスをもらうのはネタ案や応募用原稿ではなく「あらすじ」にするとよいかと。
ネタ案では判断がつきませんし、応募原稿を読んで正確に問題点を洗い出せるような人は滅多にいませんので。あらすじを見せてその人が目新しさに食いつくようなら、それはいいネタだし物語構成だという目安になります。
■質問2013/10
作品の「売り」とは、「他作品との違い」と捉えてもよいでしょうか。
●ジジさんの回答
それも含みますが、応募者の方がその応募作でもっとも読者にアピールしたい要素ということになります。
それが差別化よりも心情劇ならこれから巻き起こる心情の嵐を予感させなければなりませんし、バトルアクションならクライマックスを匂わせる嵐の前の静けさを演出しなければなりません。
■質問2013/10
斬新だけれど、どうも売れないような気がする。でも確信までは持てない……という作品は通しますか?
●ジジさんの回答
おもしろければ上げます。売れる売れないは、編集部が悩む範疇ですので。
ただし斬新だからといって、おもしろくない作品を上げることは絶対にありえません。
■質問2013/10
なぜ独自性を出そうとしすぎて失敗するのか考えてみると、読者からどう見えるかという視点が抜け落ちているからではないか、という結論になりました。この考え方に何か危険な点があれば、ご指摘お願いします。
●ジジさんの回答
エンタテイメントという一点から考えれば、独自性とは主観によって生み出される、その人でなければ思いつかないなにかです。しかしエンタテイメントとは独自性を生み出し、書き上げた「自分」ではなく、読者という「他人」に認識してもらわなければ成立しません。
自分がいくらこれは独自のものだと主張しても、多くの他人から賛同と賞賛を得られなければ意味がないのです。
以上のことから、独自性を生み出し、表現するためには基本的に主観よりもむしろ客観を意識する必要があるということになります(あくまでも私個人の意見です)。
まとめるなら、読者の心に「これは新しい!」と思わせることを考え、そのために必要なものはなんなのかを読者目線で考える必要があります。
■質問2013/10
下読みをしていて、最近(2013年10月の段階)感じたことがあればなんでも教えてください。
●ジジさんの回答
一般・ラノベ問わず、応募作で多いパターンに「実は○○は●●だったのだ」というものがあります。
転章を盛り上げたい気持ちはわかるのですが、これだけ多く使われるということは応募者の方にとって楽な一手だからに他なりません。
差別化を考える際、このパターンを使っていないかどうかを確認してみるとよいかもしれません。
■質問2013/10
「独自性・オリジナリティ」と「売れ筋」は、相容れない部分があるが、審査においてどちらを重要視する?
●回答
どちらが重要かといえばオリジナリティだが、流行に乗った作品というのは売れやすい傾向にあるため、最終選考に残る水準の作品なら長所になることも多い。
■質問2013/10
奇をてらった作品は評価され難い?
●回答
王道から外れた作品はむしろ歓迎。
ただし押さえる部分はきっちりと押さえ、ラノベに求められているものから外れていないか常に意識するとよい。
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