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憂鬱アンドロイド
「ぼくは、アンドロイド。完全防水加工の、水陸両用なのさ」 自分をアンドロイドだと信じ切っている少年・小田桐正機。 「君は正真正銘、決定的に、もう言い逃れできないくらい―人間、なんだよ」 純真だが変人と呼ばれる正機を愛する少女・桜野茜。 ちぐはぐな想いを抱えながらも、ただそこにある現実を追い求める二人を巡って、 様々な人間模様が交錯する。 「わたしが憂鬱なのはきっと―」 アンドロイドになりきれない少年と、 人間の気持ちを見つけられない人間たちの、憂鬱で純粋な愛の物語。
何より心理描写が、物凄く上手いです! 登場人物たちは皆同じように悩み、自分なりの解決方法を見付けていきます。 その悩みは現代人に至極ありがちなものですが、 それをここまで昇華できるのはすばらしい技術だと思います。 それ故に、私はものすごく共感できました。 今まで読んだもののなかで、一番「こういう奴いるなあ」と感じられる登場人物ばかりです。 出来るなら是非続編を出して欲しい! お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか? ヒロインの茜も好きですが、正機くんがかなり好きです。 この作品の欠点、残念なところはどこですか? 四話の短編+幕間と、プロローグとエピローグの構成です。 サクッと読めるのですが、一ページあたりの文字数が少ないので スカスカに感じる人も居るかもしれません。
アンドロイドの茜。 二人の息が合っている会話、かなり面白いです。 また、少年犯罪、自殺問題等、 現実にも起きている事を題材にしているため、 真剣に読んでみる価値有りです。 お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか? 正機です。 (ここから先はネタバレもちょっと含みます) 自分をアンドロイドだと信じ切っていて、 2回から飛び降りたりして怪我を起こしても「接触不良だ」 なんて言うのに犯罪現場で犯人に向かって 「貴方は寂しがり屋の只の人間です」 等と言うなど、勇気がある一面もあり、良いキャラしてます。 この作品の欠点、残念なところはどこですか? 主人公の視点が1章ごとにどんどん変わるなど、 短編が集まった感があるので、 一人の視点じゃ無いところが少しつまらない。
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雪蟷螂
涙も凍る冬の山脈に雪蟷螂の女が起つ。この婚礼に永遠の祝福を―。 長きにわたって氷血戦争を続けていたフェルビエ族とミルデ族。 その戦に終止符を打つた め、ひとつの約束がなされた。 それは、想い人を喰らう“雪蟷螂”とも言われるフェルビエ族の女族長アルテシアと、 永遠生を信仰する敵族ミルデ族長オウガと の政略結婚だった。 しかし、その約束の儀は、世代を超えて交錯する人々の想いにより阻まれる。 果たして、山脈の地に平和は訪れるのか。 そして、極寒の地に 舞う恋の行方は…。 『ミミズクと夜の王』『MAMA』に続く“人喰い物語”最終譚。
曰く、「“人喰い物語”最終譚」です。 紅玉さんが今までに出した三作で共通しているテーマの一つが、 「歪みながらも、美しい“愛”」なのだと思いました。 そして、この雪蟷螂こそが、そのテーマが最も良く表れた作品だとも思いました。 この作品にはいくつもの“愛”が出てきます。 その、出てくる“愛”は、すべてがどこかしら歪んでいる、異形の愛です。 ですが、その全てが美しい。歪んでいるからこそ美しいとでも言えばいいのか、 それとも紅玉さんが描いたからこそ美しいと言えばいいのか。 ただ一つ言えるのは、“人喰い物語”だからこそ描くことのできる形なのだということ。 それを、しみじみと感じさせられました。 私は途中まで読んでいて、この作品は「走れメロス」のようだと感じていました。 ですが読み終えたとき、そんな考えはどこかへ飛んでいってしまうほどに感動しました。 登場人物たちは、皆が皆、優しいのです。 優しいからこそ、自分がどうすればいいのか迷い葛藤し、 それによって歪んだ“愛”が生まれ、そしてこの物語が成立しています。 一言で言ってしまえば、この話は 「二つの部族の闘争と、それを止めるために政略結婚をすることになる、両部族の長の物語」です。 しかし、実際に読んでみると、そんな一言ではとても言い表すことのできない要素がありすぎて、 もう感嘆するしかないな、と思いました。
最初見たときは薄気味悪い人物にしか思えませんでした。 しかし、読み進めていくうちに彼のアルテシアへの忠義の意味が判明していき、 読み終えた時は最初とは全く違う、好印象を与えてくれました。
気にならない人は気にならないのでしょうけれど、気になる人は気になるんでしょうね。 「ミミズクと夜の王」と比べると、詩的というか、幻想的というか、 ちょっと想像に苦労する表現が多かったような感じです。
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夕なぎの街
仕事帰りにふらりと寄って、いつもの肴でちょいと一杯。 「夕凪」は、そんな常連客でにぎわう、十八番街の居酒屋だ。 錬金術士を目指す青年コウは、とある事情からここで下働きをしていた。 そんなコウの生活に、突然変化が起こった。 けぶるような雨の日、ずぶ濡れの少女が、夕凪に迷い込んできたのだ。 少女の名はマイカ。 肺炎を起こしかけていたところをコウに救けらた彼女は、なしくずしに夕凪で働くことになる。 そして、ある日マイカをたずねてコウたちの元にあらわれた少女、マナ。 その面立ちは、どこかマイカに似ていた。 謎に満ちたマイカとの関わりの中で、コウの平凡な日常は、 思わぬ事件に満ちた日々になってゆく……!? 新鋭、渡辺まさきが贈る、和風ファンタジック・アクション。
明治あたりかな? 近代の日本みたいな雰囲気の街で、 錬金術とか自動人形とかにまつわったり、まつわらなかったりする事件がチョコチョコと、 日常描写を核にゆったりと進んでいく物語ですので、好みは分かれるかもしれません。 あと、ぶっちゃけ1巻はおもろない。読むなら、ぜひ2巻から! って、それじゃあ話が分からないし……。 この作者さん「一体お前に何があったんだ!? 悪魔に魂でも売ったのか!?」 と問いただしたくなるような、突然のレベルアップぶりを披露してくれました。 まあ、長々と書きましたが最後に1つ、この作品『飯』が凄い!! 居酒屋『夕凪』で時折でてくる、異様にこだわった調理シーン!! そして出来上がる料理の数々(ほぼ単品andまかない) 初めてです! 文字情報だけでお腹が空いたのは!! 料理がメインの小説を書きたい人(いるのか?)はぜひ読んでみて下さい。
主人公なのに地味なところが、見せ場の少ないところがいい。
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